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全文】ゼレンスキー大統領単独インタビュー ロシア侵攻3か月

ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアによる軍事侵攻が始まってから3か月となった24日、日本メディアとしてはじめて、NHKの単独インタビューに応じました。全文は以下のとおりです。

Q ロシアによる侵攻が始まってから3か月。現在の戦況をどのように見ていますか?

侵攻初期が、最も困難な状況でした。世界は、ウクライナは3日間もすれば、ロシアに占領されてしまうと考えていました。一方で、世界のいくつかの国は、私たちがロシアに抵抗する準備ができていると信じてくれました。彼らには感謝しています。

しかし、3日でもなく、30日でもなく、もう3か月が経過しました。ロシアは我々の土地を占領するどころか、一歩後退も始めています。世界がウクライナを中心にまとまったおかげで、ロシアに対する制裁も効果が出始めています。

Q 日本のウクライナ支援をどのように見ていますか?

岸田総理大臣とは、4、5回、電話で会談をしました。日本はウクライナを、明確で、率直に、また実質的で全面的に支持してくれました。これは非常に重要なことです。日本はロシアとウクライナの間で、どのようにバランスを取るかを模索していました。ロシアとの間で、複雑な状況を抱えているにもかかわらず、日本の態度は率直で直接的でした。私は日本の政府と国民に感謝しています。

しかし、市民を解放するためには、ウクライナは支援をいまも必要としています。都市の封鎖を解除し、人々に食料、飲料水、医薬品を届けること。これは人道的危機を解決するために非常に重要です。

また、黒海とアゾフ海付近の海域が封鎖されているため、トウモロコシなどの穀物を輸出することができなくなっています。これはウクライナだけでなく、ヨーロッパ、アジア、アフリカにとって、非常に重要なことです。彼らは穀物を必要としています。私たちは2200万トンの穀物を保有していますが、ロシアによって邪魔されています。封鎖された海域を解除するためには、兵器が必要です。

スウェーデン、ノルウェー、オランダ、日本にある対艦ミサイルが必要で、日本政府の支援に期待しています。

Q 日本はウクライナへの支援を明確にしていますが、アジアの国々を味方につけることはどれだけ重要ですか?

これは私たちにとって非常に重要なことです。ロシアがウクライナで行っていることは、外国領土の占領、略奪、住民の拷問、大量虐殺、重要産業の妨害、原子力発電所やインフラの破壊などで、もしこのようなことが許されるなら、ロシアだけでなく、攻撃や占領を考えている他の国にも、そうした行為を許してしまうことになります。

そしてそれは、世界を占領するための起爆剤のようなものになるでしょう。だからこそ、アジアの民主主義の国々の支援がウクライナにとって非常に重要なのです。

Q ロシアと関係が深い、中国の動きについてはどのように考えていますか?

中国がロシアと一体化することは望ましくありません。このことは日本も非常によく理解していると思います。そのため、日米豪印4か国の枠組み、クアッドの会合はとても重要なことだと思います。このようなサミットは、間違いなく同盟国の結束を示し、他の国々にシグナルを送る役割を果たすでしょう。そのような結束が機能し、世界全体の強さを示すのです。

Q ウクライナの「勝利」とは、何を意味しますか?

すべてのウクライナ人にとって、勝利の意味はただ一つ。われわれの領土を取り戻すことです。クリミア半島もドンバス地域もわれわれの領土です。

しかし、そのためには犠牲を伴うでしょう。まずは2月24日以前の状態に戻したいと考えています。

それから、もう一度交渉のテーブルにつき、平和や戦争の終結、領土の返還について話し合いたいと思います。

Q いま、ロシアと停戦交渉に臨むのは難しいのでしょうか?

今のような状況では、われわれは単純な停戦には関心がありません。そして、ロシア側も停戦を申し出ていません。

もし彼らが、占領されたヘルソンや、ザポリージャ、ドンバスにいるのであれば、停戦に何の意味があるのでしょうか?停戦はわれわれに何をもたらすのでしょうか?もし私たちが停戦に合意したとしても、それは、2月24日以前のドンバス地域のような状況になるだけでしょう。

そのような交渉は望んでいません。プーチン大統領と対話するために停戦を受け入れることはもちろん可能です。なぜなら停戦しなければ会うことができないからです。

2、3日の停戦で十分だと思います。会談や対話、そして明確な何かを得るためには非常に重要なことだと思います。

Q プーチン大統領は、ウクライナに対して化学兵器、あるいは核兵器を使用すると思いますか?

それはウクライナだけではなく、世界に対する質問だと思います。そして正確には、次のように問うべきです。

「プーチンは、ウクライナを手始めに、世界に対して化学兵器や核兵器を使用すると思いますか?」と。

そしてここで考えるべきは、彼がこれまでにどんな兵器を使ったかということです。彼はすでに禁止された兵器を使っています。これが答えです。

すでに禁止されている兵器を使用している人が、さらにその先へ進めるかどうかということです。

Q アメリカとNATOにとってのレッドラインは越えたのでしょうか?

われわれの戦争の初日から、NATOは間違った決定を下していたと思います。もしウクライナがNATOに加盟していれば、ロシアによる攻撃はなかったはずです。

初日から2000発以上のミサイルが、軍だけでなく、市民やインフラに向けて発射されました。NATOに入っていたらありえないことです。

少なくとも、飛行禁止区域が設定され、空が閉ざされていたら、ありえないことでした。これは世界の歴史的にみても大失敗だったと思っています。

NATOは世界の安全保障のためのものであって、世界のどこかにあるいくつかの国の輪の中だけの安全保障ではありません。ポーランドやバルト3国はNATOに加盟しています。そして、国境を接しているウクライナはNATOには入っていません。

ウクライナの戦争は、ポーランドとバルト3国の国境での戦争でもあります。NATOは空を閉じていません。もし閉じれば大規模な戦争になり、軍隊を送らなければならないからです。そして、彼らは戦う準備ができておらず、死ぬ準備ができていないのです。

たとえば、あすにはリトアニアで戦争が起こり、ロシアがやってくるかもしれません。彼らはすでにベラルーシを通じて、移民問題をきっかけに圧力を強めています。彼らは許可なく不法に国境を越えることができることをすでに示しているのです。

そして戦闘が行われるでしょう。そのときどうするでしょう?ロシアは2014年にすべてのレッドラインを越えています。ヨーロッパは、ロシアによる戦争と占領が、ヨーロッパの統一に逆行していることを理解していません。

それはウクライナで始まったばかりですが、もしウクライナで終わらないなら、それはどこででも起きうるでしょう。ロシアの指導者たちは、自分たちの世界観を持っています。彼らは、ロシアがウクライナやヨーロッパに関与するシナリオを望んでいるのです。

Q ウクライナのメディア戦略のポイントを教えてください。

戦略は非常にシンプルで、われわれの国で起こっている現実と、ロシアが行っていることを誇張することも小さく見せることもなく、示すことです。

ウクライナでは長い間、ロシア寄りのメディアが多く活動していました。彼らは毎日のようにうその情報を流し、事実をゆがめているのです。情報はウクライナ側のメディアによる信頼できるものであるべきだと思います。メディアは世界に何が起こっているかを示すために、かなり強力に使っています。

Q ロシアの戦争犯罪に対する国際刑事裁判所の取り組みに満足していますか?

国際社会がウクライナを全面的に支援してくれたことは、われわれにとって重要なことです。日本を含む海外の専門家による調査にウクライナも参加し、国際刑事裁判所の判決が出たときに、ウクライナだけでなく、全世界が「ロシアが何をしたのか」を明言することが、われわれにとって非常に重要なことなのです。

ロシアは軍事と政治の両方の指導者が責任を問われることになります。命令した人、実行した人、すべてです。

Q 日本へのメッセージをお願いします。

私は日本の国民に感謝したいと思います。すでに述べたように、ウクライナとロシアの間のバランスを模索するのではなく、われわれの主権と領土の保全を支援してくれました。

私たちは、独立のため、自由のために戦っています。私たちの自由は、あなたたちの自由でもあります。

私たちは、日本の国民の間に結束があると感じています。

戦争が終わった後には、岸田総理大臣に会って、すべての精神的なサポートに感謝したいと思います。

ありがとうございました。