日ASEAN特別首脳会議に参加するため日本を訪問しているファム・ミン・チン首相と岸田文雄内閣総理大臣は、16日午後4時10分から約20分間にわたり首脳会談を行った。また、会談に先立ち、政府開発援助(ODA)案件3件の文書の交換が行われた。
会談には、日本側から齋藤健経済産業大臣、村井英樹内閣官房副長官ほかが、ベトナム側からは、ダオ・ゴック・ズン労働傷病兵社会相、グエン・チー・ズン計画投資相、ダオ・ホン・ラン保健相、グエン・バン・タン交通運輸相、ダン・クオック・カイン資源環境相が同席した。
会談後、両首脳は両国の経済分野における協力の重要な取り組みをまとめたファクトシートを発出した。
冒頭で岸田首相は、包括的戦略的パートナーシップの下、両国の関係を更に発展させていきたいとした上で、世界が歴史の転換点にある中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、人間の尊厳が守られる世界を確保すべく、ベトナムを含むASEANとの協力強化を重視しており、今回の特別首脳会議が、これまで築いてきた日本とASEANの信頼を次世代につなぎ、関係を更に強化していく機会となることを願うと述べた。
これに対してチン首相は、今回の訪日における歓迎に感謝の意を表明するとともに、両国関係が包括的戦略的パートナーシップの下、幅広い分野で発展していることは喜ばしく、この50周年を機に、両国関係を一層強化していきたいと述べた。
二国間関係について、経済分野に関し、岸田首相は、今回、ホーチミン市都市鉄道(メトロ)1号線を含む3件のODA案件の署名ができたことは喜ばしいとし、今回の首脳会談で、両国が協力を進めていくべき主要な経済プロジェクトをファクトシートにおいて特定できたことは有意義であり、両国でスピード感をもって、これらの案件を進めていきたいとした。
これに対してチン首相は、両国間で緊密に連携して様々な経済プロジェクトを進めたいと述べ、ベトナムにとって日本は最大のODA供与国であり、ベトナムの社会経済発展のためにODAを活用していきたいとした。
さらに両首脳は、両国間の経済関係の強化のための様々な方策について意見交換を行った。
岸田首相はまた、カーボンニュートラルの実現に向け、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)首脳会合を契機に、ベトナムと共に脱炭素に向けた取り組みを加速させていきたいと述べた。チン首相は、ベトナムはこの分野においても、日本を含む国際社会と連携していきたいと述べた。
安全保障分野に関し、両首脳は防衛交流を更に拡大するほか、防衛装備品移転に向けて協力を推進することで一致した。
人的交流について、岸田首相は、ベトナム人材は日本の社会経済発展などに必要不可欠な存在となっているとし、今回、特定技能の試験をベトナムで実施することになり喜ばしいと言及した。一方、チン首相は、在留ベトナム人が日本で更に活躍できるよう、日本政府の更なる協力について期待を寄せた。
岸田首相とチン首相は、地域・国際情勢についても率直な意見を交わした。両首脳は、核・ミサイル問題や拉致問題を含む北朝鮮への対応などの東アジア情勢、南シナ海情勢、ミャンマー情勢、ロシアによるウクライナ侵略への対応、イスラエル・パレスチナ情勢など、地域・国際情勢への対応において一層緊密に連携していくことで一致した。